《MUMEI》 幸セ「映画!?もう完成したんですか?」 「そう。試写会あるけど、大丈夫そう?」 「全然余裕です!たくさん休みもらったおかげで元気いっぱいですよ」 「……そうか。よかった」 月岡さんは嬉しそうに笑った。 映画っていうのは、前にオレが同性愛役を演じたあの映画。 かなり思い入れが強いかったから、とても楽しみにしていた。 「今度みんなと見に行きたいな」 ……あ、でも早苗さんそろそろ臨月か。時間が経つのって本当に早い。 生まれてくる赤ちゃん、楽しみだなぁ。男の子かな、女の子かな。 絶対有理とオレは同じくらい楽しみにしてる。 …いや、ちょっとは負けるかな。 「有希、なんだかご機嫌だね。ずっとにこにこしてて幸せそうだ」 「ハイ、幸せですっ」 「……そうか。弟、もうすぐか?」 「弟が生むんじゃないんですけどね。絶対可愛いですよ」 「可愛い人達から生まれるからね。楽しみだね」 「待ち遠しいです…」 「ハイハイ、仕事に集中して〜」 「ハ―イ」 すっごい幸せ。ハートが絶対に飛び散ってるのが見えそうなくらい幸せ。 どうしてこんなにオレは幸せなんだろう? 「春日さんっ」 「……あ、川瀬さん。お疲れ様です!」 「お疲れ様です。なんだか最近春日さんって雰囲気良いですね」 「……?」 「あっ今まで悪かったとかそういうことじゃなくてっ!」 「?あ……そうなんですか?」 川瀬涼子さん。モデル。年はひとつ上。背が高い。170pあるかないかくらい。切長な目をしていて、唇も薄い。 簡単に言えば、環さんとは反対の顔立ちをしてる。環さんは吸い込まれそうな程大きくて黒瞳がちな目。ぷっくりと膨らんだ、柔らかい、弾力のある唇。 どちらかと言えば優しさを絵に描いたような顔の作りをしている。 オレは環さんの顔の方が好きだなぁ。 ……って当たり前か。 「川瀬さん、今日はもう終わりですか?」 「え?…あ、私はもう終わりです」 「そうなんですか。オレはまだまだこれからなんで。じゃあ失礼します。お疲れ様でした」 仕事も前以上に楽しい。これも幸せなおかげかな? 「…有理さん、何か最近おかしいですよ?」 「おかしくないですよ〜。何言ってるんですか」 「……やっぱり変です。病院行きましょうか?」 「た…っ環さん!!」 前へ |次へ |
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