《MUMEI》

「タイミングわりぃよ美咲。」
拓史がつまらなそうに拗ねた。

美咲はちらっとこちらを見ただけで、驚きもせず、コーヒーをいれる。

「仕事はどうした…」
美咲が言った。

「…すみません。」
達也はズボンを履きながら謝った。

「達也はいいよ。まだ入ったばかりだし…。そもそも拓史と組ませた私が悪かったカラ。」

すると機嫌を損ねた拓史が反論しだした。
「俺は達也とじゃねぇと仕事しなねぇから!!」

それを
「どちらにせよ仕事なんて少しもしてないでしょ」 と美咲がきっぱり言い返す。


「ただの浮気調査じゃん!」


「事務所潰したいの?評判下げるなら調査しなくていいよ。」


「俺の事務所だろっ!!」


「あなたのせいで仕事失くなったら困るのは、あなたじゃなくて、みんなでしょ。あなたが振り回してる人の身にもなりなさい。」

そーだそーだ。

いくら美咲さんに反論したって、拓史が勝ったためしなんてない。

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