《MUMEI》

「……中々、興味深い余興だな。」

靄のかかる頭の中でも千石様の声は研ぎ澄まされている。


「本当なら犯し殺してゴミみたいに棄ててやりたかったんだ。
見付かっては仕方ない、あんたの可愛いのの目玉をくり抜いてやりますよ。」

眼球を指で見開かれる。


「……視神経を上手く引き剥がせよ。」

千石様にはいつもの余裕がある。



「その、いつでも冷厳なあんたが始終締め付ける……逆らえ無いんだ……大切なものを奪われても尚……」

この人は私に似ているのかもしれない。


「藤間、私の“影”ご苦労。もう二度と現れるな。」

起伏の無い命令だ。
藤間さんは私の眼球に向けていた刃物を千石様に向き直していた。
悲鳴に近い叫びで千石様に突進してゆく。





千石様は事もなげに軽やかに避け、藤間さんは地面に手を付けた。
いつの間にか入って来ていた他の男性の使用人に連行されてゆく。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫