《MUMEI》
「聖が、今ここに居る中で一番可愛い」
「……!」
一瞬全ての音が消えた。
周りが現実じゃないみたいに磨りガラスが俺達を取り囲んでるかのようなそんな錯覚さえ起こして。
「な、貢…」
「本当だよ、聖以上の奴なんかいない、……、聖が一番綺麗だ」
「き、綺麗って…俺、男だし……」
足元がぐらぐらしてきて、貢の腕が熱くて。
鼻先に感じる貢の体温が心地良くて。
骨抜きにされたみたいにふにゃふにゃになりながら貢に寄り添うと、更に引き寄せられた。
たくさんの人が行き交う中、邪魔にならない様に電柱に近い位置にはいるけど…でも…でも…
ああ、頭の中が、体がハチミツみたいに甘くて仕方がない!
「貢…」
「ん、」
「ホテル…、早く…」
なんか周りなんか気にならなくなってきた。
俺も貢の腰に腕を伸ばし掴まる。
「…行こう」
「うん…」
「ちょっと待て」
「……あ……
うわあ!!
ま、誠っつ!!!」
振り返ると誠が立っていて、俺は一瞬で我にかえり…
慌てて貢から離れた。
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