《MUMEI》 二月十三日「祐也、これ、どのくらいいける?」 志貴はそう言って、チ●ルチョコを俺に渡した。 「どのくらいって?」 「一日最高何個いける? あと、何日間なら続けて食べてもいい?」 (変な質問) そう思いながらも、渡されたチョコを見つめて 「これくらいなら、一度になら五個・一個ずつなら毎日食べてもいいかも」 (甘い物好きだし) 深く考えずに、俺は答えた。 「そう、良かった。あ、それから、今日ちょっと付き合ってくれる?」 「いいよ」 俺は、また、軽く答えた。 「…ここ、入るの?」 「そう!」 (入れるのか?) たどり着いた一軒の洋菓子店の中は既に超満員だった。 「俺、外で待ってるよ」 「何言ってるの? 祐也だって忍さんに買わないとダメでしょ?」 「何を?」 「何をって…」 志貴は強引に俺を引っ張って店内に入った。 「バレンタインのチョコに決まってるでしょ」 志貴が呆れた口調で言った。 洋菓子店の中には、チョコレートしかなかった。 ここは、チョコレート専門店だったのだ。 (あれ? 忍にチョコ?) 俺は、旅行の帰りに忍としたやりとりを思い出していた。 前へ |次へ |
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