《MUMEI》
遺志の書
憲子さんではない人に躱を触られることは不愉快だった。
覚束ない動作が私の人としての尊厳を奪われてゆく気がした。
私をものとしか扱えないのだ。


自由がきかないので体中に管が通され、末期患者のような痛々しい姿になっている。




「……モモ。」

千秋さんが来てくれた。


「八十の事……口止めされていたんだ。
つい、言ってしまった。モモの傷付いた顔が見たくなってしまって……モモは八十じゃない。八十はこんなに俺と話してくれなかった、食べ物を粗末にするなとか、花壇を踏むなとか、言わなかった。」

千秋さんは漠然と反省してくれているのだろう。
私のように母親を知らずに育ってしまい、母の対象を探していたのだ。
私の場合、その女性に襲われてしまったが……

千秋さんは口に出せないだけで愛に溢れた方だ。
私の為に、葉っぱを持って来て下さった。

自然に落ちたものらしく、土の香りがする。



……葉っぱの量が多く、窒息しそうになる。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫