《MUMEI》 遺志の書憲子さんではない人に躱を触られることは不愉快だった。 覚束ない動作が私の人としての尊厳を奪われてゆく気がした。 私をものとしか扱えないのだ。 自由がきかないので体中に管が通され、末期患者のような痛々しい姿になっている。 「……モモ。」 千秋さんが来てくれた。 「八十の事……口止めされていたんだ。 つい、言ってしまった。モモの傷付いた顔が見たくなってしまって……モモは八十じゃない。八十はこんなに俺と話してくれなかった、食べ物を粗末にするなとか、花壇を踏むなとか、言わなかった。」 千秋さんは漠然と反省してくれているのだろう。 私のように母親を知らずに育ってしまい、母の対象を探していたのだ。 私の場合、その女性に襲われてしまったが…… 千秋さんは口に出せないだけで愛に溢れた方だ。 私の為に、葉っぱを持って来て下さった。 自然に落ちたものらしく、土の香りがする。 ……葉っぱの量が多く、窒息しそうになる。 前へ |次へ |
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