《MUMEI》

404号室の前まで来て、蓮見先輩は鍵が見つけられず、自分のポケットを探っていると、いきなり、ドアが勢いよく開いた。

鉄製のドアが、『ドンッ』と思い切り、先輩にぶつかった。鈍い音がする。

「イテっ!」

私を掴んでいた腕が緩んだ。ドアの前で頭を押さえて屈んでいる。


「・・・なんで、あんたここにいるの?」

ドアを開けたのは、成原さんだった・・・。

着ている私の制服が、ハサミで切られたのか、ボロボロだった。

私はその姿に驚き、手で口を押さえ、息を飲んだ。

「ちょ、早く!」

成原さんは有無を言わさず、私の腕をとり、走った。

「おまえら、ふざけんな!」

後ろから、蓮見先輩が怒鳴る声が聞こえる。

私たちは全力で走った。


自動販売機の間にちょうど良い隙間を見つけて、私と成原さんはそこに息をひそめた。
蓮見先輩は諦めたのか、それ以上は追って来なかった・・・。

「なんでいんの?」
成原さんは私を横目で睨んで、そう言った。

「別に、あなたが心配とかじゃなくて、私の名前を語ってから、腹が立って。」


それだけで、普通追って来ないだろ?という風に
「ふーん・・・。」
と答えた。

私は落ち着いて、彼女の姿を見た。このままじゃ外を歩けないくらい、ボロボロな格好だった。

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