《MUMEI》

「野村くん?大丈夫かい?」


若そうな医者が心配そうに顔を覗いていた。

俺は焦点をなんとか合わせ、一番気になることを尋ねた。



「先生」

「なんだい?」

「…俺の命は、あと、どんぐらいなんスか?」


「…、一ヶ月、だ」

「………一ヶ月…ははは、みじけぇなぁ…」






笑えた。
まさか、だった。

普通の家庭に生まれ、
普通の学校通って、
普通に友達もいて、
普通に、これからもずっと生きてくもんだと思ってた。





“一ヶ月の命”





俺は、一ヶ月後、この世から消えるんだ。










「ただいま」

「おかえり、どうだった?」


母親が、どうせただの風邪か何かでしょ?というふうに話しかけてくる。


「親父は?」

「いるよ、テレビ見てる」
「兄貴は?」

「部屋にいるけど…なんなの?」

「ちょっとみんなリビングに呼んで」

「コウ?」







「なんだ、話って」

親父も兄貴も、めんどくさそうにソファに座る。

「俺腹減ってんだけど〜飯まだなん?」









「俺、がんだって」





「あと、一ヶ月だって」

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