《MUMEI》

私は助手席に座り、成原さんは助手席の後ろに座る。成原さんはまるでいないかのように無口だった。

「洋介さん、なんであんなところに?」

「あー。ナナさんからいきなり連絡が来て、奏ちゃんが今から下校するから、尾行しろって。」

先生には私の行動がわかっていたのだろう。

「そしたら、変なマンションに入って行って、ヤバそうな男と絡んでるから、驚いたよ。」

「・・・すいません。」

罰が悪そうに、私が俯いたので、洋介さんは優しく笑った・・・。


しばらくすると、洋介さんのお店に着き、私たちは店の中にある、小さな応接セットに座らされた。

「先生来るから、もう少し待ってて。」

洋介さんの言葉に私は頷いたが、成原さんはため息をついた。

洋介さんは『ちょっと』と言って席を外した。

私たちは二人きりで残されて、少し微妙な雰囲気で・・・
「なんで、名波先生の友達と知り合いなの?」
と成原さんに話し掛けられるまで、ただ呆然としているだけだった。

「・・・誰かさんのおかげで、制服がなくなった時、先生に連れて来てもらったから。このお店に。」

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