《MUMEI》
初顔合わせ
「あ、はい!そうです!アタシが…いやいや、私が奈良月 翔です!」

思いっきり動揺してんじゃないか…
俺達は居間へ移動し、これまでの経路を話した。

「そうか。じゃあ、よくここまでやってこれたね」
父さんは目を細めて笑う。
「まるで…奇跡が起きたように嬉しいんだ」
俺は誇らしく答える。

「…奇跡か」
「ところで、大悟君は元気なの?」
母さんがマグカップを口元に移しながら話す。

「あいつはバリバリ元気です!」
翔と俺は思わず声を揃えて笑って答えた。

「…揃って言う事か…?」父さんは引いてしまった…
やばい…

「あぁ、でも、昔と雰囲気はあんなままだよ」
「そうか…翔ちゃんは進路どうするんだい?」

翔はそれまで面接に行くような雰囲気で話していたが、自然と明るくなった。

「アハハ…私は紀和と一緒に暮らします」
「ちょっと待った!それって本気?」

思わず椅子から立ち上がった。

「あ…あぁ、本気だよ?」
「いいじゃないか…仲良しさんで」

この声は…
「兄貴!」
しかもまた例によってジャージ姿だった。
「…あんたさぁ…」
「よ!翔ちゃん!」
「あ、はぁどうも」

兄貴は笑って答えた。
なんで和室で寝てんの…?
「可愛い子じゃないか!いいなぁ、紀和は」
「あぁ…じゃあ兄貴にやるわ」

すると、翔にビンタを張られた…

「紀和!あんたねぇ!アタシはこんな人と付き合いたくもないよ!」

兄貴可哀想になあ…
全否定しやがったもんなぁ…

「!!」
父さんと母さんは翔のビンタにびっくりしていた。

「…母さん…翔はこういう奴です」
「わ…分かったわ」

少し顔が引きつっているところを見ると、どうやら「怖い人」と印象付けられたようだ。

「…翔、やり過ぎ」
「あ ごめん」

そして、翔は座り直す。

「紀和…」
「なんだ?」
「父さんはね…この人で良かったと思っているんだ」
俺はその言葉にうつ向いた。

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