《MUMEI》 階段を降りてリビングに向かうと、 大きなソファに腰掛けて、 コーヒー片手に新聞を広げている父さんの姿があった。 いつもなら母さんもいるはずだが… 離婚して何処かへ行ってしまった。 別に寂しくはない。 あんなヤツ、顔も見たくないくらいだ。 「おはようございます。」 「ああ。」 父さんはそう返事をすると、 ふと壁に掛けてある小シャレた時計に目を向けた。 「準備は出来たのか?」 「はい。」 俺は慌てて冷蔵庫に冷やして置いた、 “栄養補強食品”と書かれたゼリーを取り出すと、 一気に飲み干した。 前へ |次へ |
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