《MUMEI》

「なあ、お前バカじゃねぇの??」


まだ日が射し初めて間もない野球グランドで、
やけに低い声が響いた。

「だって肩温めて置かないとよぉ!!」


「試合、午後からなのに??」


「うん!!」


「やめてくれっ蓮翔!!」


「えー?

いくら豪田でもなあ、
そればっかりは……」


「超のつくアホだな!!

何でそんなに気合い入ってんだよ?」


「よくぞ聞いてくれたな、豪田君!!

実は……颯ちゃんが応援に来てくれるんだ!!」


「颯ちゃん?」


「うん!!滝澤颯馬。」


しばしの沈黙。


「え?!

滝澤颯馬ってあの?

新聞に載ってた?!!」


「うん!!

俺のだーいしーんゆーう!!」


ピアスをちらつかせながら自慢気に話す俺に、
豪田は更に驚きの声を上げた。


「うお〜!!すげぇな!!」


「だろだろっ!!」


早く来てくれないかな?


俺はこのあと、
あんな後悔を味わうことになろうとは知らずに、
チームメイトとの一時を楽しんでいた。

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