《MUMEI》
「そんな慌てなくたって延長してもよかったのに」
「駄目だよ、30分1200円なんて勿体ない、貢が頑張って作ったお金無駄にできっかよ」
今日はバイトした金だけで祝ってくれてるから…
ラブホも思ってたより高かったし、バイトも結果そんなに稼げなかった事を、俺は知っている。
「…ありがとう」
無邪気に笑うと、自然に肩に腕が回ってきた。
夜になったのもあるけど、恥ずかしいから嫌だとかそんな気分は何故か更々感じなくて、俺はそんな貢と一緒に駅に向かって歩く。
たくさんの人とすれ違うけど、皆それぞれに向かい、誰も俺達を見ていない。
「俺がしっかりしてれば…、恥ずかしいとかないんだな…」
「−−−−聖…」
少しだけ、貢の手の力が強くなった。
ふと見上げると真っ直ぐ前を見る貢がいて。
鼻筋の通ったかっこいい横顔。
少し痩せてはいるけど、背が高くて逞しくて…。
「欲しいもの決まった?」
「うん」
「よかった、何処で買おうか」
「…売ってないから…買えない」
「………え?」
「つか、願い事でもいい?一個お願いしたい事ある」
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