《MUMEI》 「…なんで?」 「父さんは元々気が強い子が好きなんだよ」 そうだったんだ…知らなかった… 「紀和はどう思ってるんだい?」 暗い顔を止めた。 「俺は…ただ、仲良く仲良くって考えてたから」 「少しくらい、どこが好きかっていうぐらい考えろよなぁ…」 兄貴は俺達の並べて座っている椅子に父さんの横に座った。 「…だって!忙しいんだよ!バイトもしてた時期あったから!」 「だからってなぁ…」 「紀和の言っている事は本当です」 それまで黙っていた翔が顔を上げて話す。 「そうだとしても、翔ちゃん、悲しくないのかい?」 「アタシはもう慣れてますから」 しっかりとした口調だ… 「翔…お前なぁ」 「だって本当の事だもの」 翔は俺の顔を見た。 「俺も翔で良かったと思ってるんだ。翔じゃないとやっていけない気がして」 母さんがその言葉に答える。 「翔ちゃんは幸せものね!こんないい息子を貰えて」 一瞬、俺は顔を青く染めた。よくそんな事を言えるなぁ… 「母さん、それって…冗談とかじゃないだろうな?」 「もちろん、冗談じゃないわよ」 (本気かよ…) そして、その時、翔は立ち上がった。 「じゃあ、アタシそろそろ帰ります」 「あ!翔ちゃん!ちょっと待って!」 兄貴は翔を腕を伸ばして止めた。 「…?なんですか?」 「俺、携帯持ってるからさ、なんかあったらメールしなよ!」 そう言えばこいつ…持ってたんだっけ。 俺も翔とマンションへ帰るので、立ち上がった。 「…は、はい」 翔はオレンジ色の携帯を取り出し、アドレスを教えた。 そして、翔は俺の家族に挨拶をし、一緒に帰った。 「いい人だったね」 帰り道の中、手をつなぎ合って帰る。 「…そうか?近々お前の所の両親にも会わないとな」 翔はその時、しわ寄せした。 「紀和…アタシは…両親の家に行きたくない…」 「なんで!?」 「…嫌な思い出があるから…」 前へ |次へ |
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