《MUMEI》
13#
「…お屋敷主様……」

背を向けたままの主と草馬を見比べ、甲条院はニヤリといやらしく口元を歪めると、耳障りな笑い声をあげた。


「ホッホッホゥゥ!小僧、なぁ〜んにも知らないのでおじゃるなぁ〜〜」

キッ!と草馬が睨むと、白塗りの顔の前にパラリと扇子を広げ「おぉコワイ、コワイ」と口元を隠す。


「甲条院殿、もう一度言いますぞ。お引取りくだされ。さもなくば…」

「…さ・も・な・く・ば?何でおじゃるかァ〜?」

「斬る。」

主の声で

一瞬にして空気が張り詰めるのがわかった。

主から放たれる、異様とも思える殺気により屋敷を囲む木々がざわめく。

草馬は、経験したことの無い殺気に、目の前の老人が何倍にも大きく見えていた。

握った刀が、無意識にかいた手の内の汗により、ズルリと抜け落ちそうになる。

額からは、ポタポタと汗が滴り地面の色を変えていく。

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