《MUMEI》
14#
――――怖い。


自分に向けられている殺気では無いのは一目瞭然。

なのにこの、気を抜けば命も絶たれてしまいそうな感覚。

正面からこの恐ろしいほどの気を受けている甲条院が、先程までと同じで居られる筈がない。

そう確信し刀を握りなおすと、白塗りの姿を目で捉える

そこにはさっきまでのニヤリと歪んだままの白塗りが立っていた。

違う所と言えば、甲条院の周囲からも主とは違った禍々しく、ねっとりと絡み付くような気が放たれている。




――――なんだ?!あの禍々しい妖気は??!



「このぉ、死に損ないの半妖怪めがぁっ!また、麿の邪魔をしようというのでおじゃるかァ!!」

怒りの気が膨大に膨れ上がって、ウネウネと甲条院の周りを広く取り囲み始めた。

「草馬、さがっておれ」


主の低く身体に響く声が、有無を言わさず草馬を後ろに、さがらせる。


握られたままのムチをつたい、

主の殺気と甲条院の毒蛇のような重苦しい妖気が、目で追うのも困難であろうスピードで向かい合う。


2人の発するものが、ぶつかり、空間を揺るがす歪みが波の様に押し寄せる。

「うぁッッ・・・」

爆風の様な歪みは、草馬の立つ位置まで一瞬で訪れ、

今日まで鍛錬を重ねてきた少年の視界をいとも簡単に閉じさせてしまう。

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