《MUMEI》 頼ミ待望の赤ちゃんがとうとう生まれそうだ。 「絶対かわいいよな」 「うらやましいだろ?でもお前には絶対抱かせてやんないからな」 「ええ!?なんでだよ!ズルイ!横暴!ケチ!」 「ケチじゃねぇよ。下手してオレとお前を間違えてしまったらどうするつもりだ」 「絆薄いし心狭い…」 「…その代わり、流理には頼みがある」 「う○こしたからおしめ替えさせてやるとかじゃないよな?」 「仮にもアイドルがう○ことか言うな。……そんなんじゃねぇよ」 「じゃあ何?」 「……名前、流理が付けて」 一瞬、思考が停止。 ……なんで? 「有理?」 「と…特に理由は無いんだけどっ早苗と話して決めたんだ」 「特に理由は無いのになんで早苗さんとそんな話になるんだよ!」 「流理に名前付けて欲しいのは…やっぱ流理には一番世話かけてるからだよ。世話だけじゃない、迷惑も心配も。流理がいなかったら早苗とはヨリ戻ってなかったと思うし、結婚だってしてなかった。流理も気のまわし過ぎで熱出したりしてただろ?早苗の病院をバレないようにしてくれたり……。挙げるときりないくらいだ。……理由はそんなことだよ」 気付いたらオレは少し涙ぐんでいた。そんなこと、全然ないのに。 むしろ大切な人のためにしていることだから、辛くも苦しくもなかった。 「…わかった。すぐ考える」 「頼むな、流理」 男の子か女の子かわからないけど、そんなの関係ねぇ!! 「まだかなぁ。もう入って2時間くらいか」 有理は車椅子ということで、立ち会いは許されなかった。 手術室にはたくさんの機械とそれを動かすコード。そしてひっきりなしに入れ換わる人。 それの邪魔になるということで禁止されたらしい。 「もうそろそろだよ。オレで赤ちゃん抱っこの練習でもしとく?」 「バ――カ。赤ちゃん抱っこする前にオレがまた入院だよ」 その時、泣き声が扉の奥から聞こえてきた。 前へ |次へ |
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