《MUMEI》

「だぁーなーんーでーこないんだ!!!」


相手チームが守備の回、俺は一人ベンチで嘆いていた。


「落ち着け。蓮翔!!
いつものポーカーフェイスはどうした?!」


山村が気遣うように背中を叩いてくる。


俺は前にある手すりに体勢を移すと、一気に体重を掛けた。


「だってもう5回裏だぜ??」


何してんだよ……


「来ないんじゃないの?」


聞き慣れない声がして顔を上げた。


「誰だ?お前?」


「敵のヤツがここに来ていいと思ってんのか!!?」


豪田が追い払おうと手を上げた。


「いや、まて豪田。
何だって?颯ちゃんが来ない?!」


そいつは軽く笑うと、


「まあ、推測だけどねぇ。
だってほら、この球場で前ボコされたでしょ?!
滝澤颯馬君。」


ククク…と笑った。


「ってめぇ!!
何であの日のこと!!」

俺はそいつの胸ぐらに掴み掛かった。

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