《MUMEI》

よく見ると、


……コイツっ!!

颯ちゃんが言っていたヤツにそっくりだ。


「アンタが颯ちゃんをボコしたのか…?」


そいつは軽く笑うと、


「は?んな訳ないっしょ。
滝澤颯馬をボコしたのは俺の兄ちゃんだよ。」


「な!??」


「フフッビックリした?!」


唖然としてる間に更に追い討ちを掛けられる。


「まあ、あんだけくらされちゃあ、トラウマになってるかもな。」


まるであの日を知ってる様な口振り……


「この野郎!!」


殴り掛かろうとした瞬間、
誰かが手を止めた。


「放せ!!豪田!!」


「いや、放さない。」


「はあ!?」


「お前、自分の立場分かってんのか!!?
それこそ殴ったらそいつの思う壺だぞ!!」


「!!!!」


俺はハッと我に返った。

「すまん……」


そして、そいつの胸ぐらを掴んでいた手を放す。

「チッ、もうちょいだったのに…」


「!??」


「フ、じゃ、またこの後で……」


そうして自分のベンチへ戻ろうとした時、いきなりこちらに振り返った。

「なんだ?まだあるのか!!」


神道が威嚇するように声を低くして言った。


しかし、そいつは神道には目もくれず、
真っ直ぐに俺の目を見据えた。


「もし来なかったら、たぶん…いや、絶対君のせいだね。」


え!?


一瞬、何を言われているのか分からなかった。

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