《MUMEI》
祐の目的
「…で、何しに来たんだ?」

「今晩泊めてもらおうと思って」


ヘラヘラ笑いながら、祐は言った。


…………


「帰れ」


俺は玄関を指差した。


「えぇ!? 何で!? 俺達友達じゃん!?

何もしないよ!?」


(そう言われてもなあ…)


「普通、友達でも一つの布団では寝ないだろ?」


俺の部屋には一人分の布団しか無かった。


「あ、大丈夫。祐也が泊めてくれるなら、祐希が貸してくれるって」

「あ、…そう、…って、何でそうなるんだ!?」

「いや〜、今うち女性陣の溜り場になってて、父さんも隣に避難してるんだ。

ちなみに、祐也に断られたら、俺、隣に泊まるんだけど?」

「何だよそれ!」


さっぱりわけがわからない俺に、やっと祐は真面目な説明をした。


明日はバレンタインで、志貴のように買って渡す女性もいるが、手作りのチョコレートを渡したい女性もいる。


祐の母親の志穂さんは、お菓子作りの腕はプロ並で、教えるのも非常にうまい。

そんなわけで、普段志穂さんにお菓子作りを教わっている近所の奥様方はもちろん、噂を聞き付けた女性陣が殺到して


仲村家は、今、ある意味戦場なのだと祐は語った。

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