《MUMEI》
いつもと同じ下駄箱
「学校でもすごそうだな。いいな〜、祐也は。俺は今年は絶対身内だけだ」


祐はまだ、周りから酷い男のレッテルを貼られていたから悔しそうだった。


「そんなにチョコが欲しいのか?」

「いや、何となく寂しいだけ。
それとも、祐也がくれるか? 友チョ…プッ!」


祐は今朝の柊を思い出し、また笑っていた。


「お前のだってそうだろ?」

「だっ…て、俺、あんな、乙女な感じで、アハハハハ」


(まぁ、確かに)


祐は本当に軽く俺に渡した。


それに比べて柊の渡し方は…


まるっきり、乙女だった。

「アハハ、あ、愛の告白みたいだったよな〜!」

「その位にしとけよ。可哀想だろ」


学校に着いてまで、祐が笑っていたら、皆が不審な目で見るだろうし、祐は簡単に理由を言いそうな気がした。


だから、俺は正門が見えた時点で祐に注意をした。


「はいはい。それにしても、楽しみだなぁ。祐也がどのくらいもらうか」

「もうもらわないだろ」


俺と親しい女友達は志貴しかいなかった。


俺の言葉通り、下駄箱にもチョコは一つも入っていなかった。


「おかしいなぁー?」


祐はしきりに首を傾げていた。

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