《MUMEI》
高山家女性陣より
「おはよう、祐、田中君」
「おはよう」

「おはようございます」


俺と祐は同時に振り返り、希先輩に挨拶をした。


「良かった、会えて。はい、これ」


希先輩は、大きめの紙袋を俺に手渡した。


「これ?」

「チョコレート」





義理とはわかっていても、何となく柊に悪い気がした。


「にしても、袋でかくないか?」

「だって五人分だから」

「五人?」


俺が改めて中身を覗き込むと、確かに包みが五つあった。


「私と、母さんと、貴子さんと、楓さんと

お祖母ちゃんの分」

「な、何で!?」


特に、最後の一人がものすごく気になった。


「私は、委員会で一緒になったから、それで。

後は、カードが入ってるはず」


よく見ると、確かに四つの箱にそれぞれ小さなカードが付いていた。


『いろいろお疲れさま 志穂』

『ちゃんと毎日食べなさいよ 楓』

『臨時バイトありがとう 貴子』


そして…


『他の三人が名前書いたからわかるわよね。
ホワイトデーにうちに来なさい。待ってるから』


(うわぁ…)


名前の無いカードは、間違いなく高山家で最強の女性の物だとわかった。

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