《MUMEI》 義理チョコ昼休み。 俺は、祐からメールをもらい、屋上の扉の前に来ていた。 いくら好きでも、さすがに二月の屋上に出る気は無かった。 そこにやってきたのは、意外な人物だった。 「安藤先輩?」 安藤先輩は、無言で階段を上がってきた。 「先輩?」 「手」 「は?」 「手、出して!」 「は、はい!」 俺は慌てて両手を差し出した。 (やっぱり苦手だな、この人) そんな事を考えていると、安藤先輩はブレザーのポケットから何かを取り出した。 「言っとくけど、義理だから」 「は?」 安藤先輩は、取り出した物を勢いよく俺の手の平の上に落とした。 そして、そのまま走り去っていった。 (何なんだ? 一体…) 俺は、改めて手の平を見つめた。 そこには、昨日祐にもらったのと同じトリュフチョコが一つだけ、小さなビニール袋に入っていた。 首を傾げていると、丁度いいタイミングで祐からメールが来た。 『お礼とお詫びの沙希の手作りの義理チョコだってさ。 ちなみに、昨夜俺が渡したのは、俺の手作りチョコだから。 本当は一番乗り狙ってたんだけど、志貴に負けた』 …忍の事は黙っておく事にした 前へ |次へ |
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