《MUMEI》
放課後の大行列
放課後、普通に帰ろうとした俺は、志貴に呼び止められた。


そして、何故か、黒板の前に誘導された。


「…何?」

「座って」

「何で?」

「いいから」


(何なんだ?)


俺は、首を傾げながらも、言われるままに志貴の用意した椅子に座った。


不思議と、教室内にはまだ人が残っていて、何だかソワソワしていた。


…特に、女子が。


(何だ?)


廊下からも視線を感じてふと見ると


「うわ!」


大勢の女子生徒が、綺麗に整列しながらこちらを見ていた。


「お待たせ、皆」


志貴はよく響く声で笑顔で告げた。


「ちゃんと、順番に、会員番号順に、祐也にチョコを渡してね。

事前に会報で伝えた通り、一口チョコ以外はルール違反だからね。

握手くらいはいいけど、お触り厳禁よ」

「え? 何それ!?」


驚く俺の前に、早速同級生の女子がやってきた。


志貴が言い終わると同時に整列したらしく、後ろにもズラリと並んでいる。


「はい、田中君」

「あ、…どうも」


とりあえず、受け取る。


「あの〜」


モジモジしながら、握手を求められ、断るのも失礼なので、応じてみた。


それが、延々と続いた。

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