《MUMEI》
 帰省
実家には帰らない予定だったけど

俺は姉を連れて帰省した

誰かが、姉の卑猥な写真を、近所中のポストに入れたから
  
たちまち、噂になり、
実家に避難したんだ

警察に相談したけど

警官「犯人は直ぐにわかるでしょう」 と

そう、彼らの仕事は犯罪者を捕まえる事で
姉を守ってくれる訳ではない



 
直ぐに、犯人はわかった

逮捕された、奴の弟が
嫌がらせでやったらしい

我が家に正月はなかった

街が動きだして直ぐ

民事訴訟の準備に伴い
姉は、強姦罪を親告した

姉「少しは強くなって、立ち向かう勇気もたなくちゃ」
そう言ったものの

過酷な作業だったようだ

女性の警官とはいえ、
どこで、どうなって、どういう行為を強要されたか
事細かく、話し、
証拠のDVDを 一緒に見て、検証したらしい

俺は、なんの手助けも出来ず、もどかしさを感じてた
北川の家族が、代理人を通して、示談の申し入れをしてきた

法律事務所の一室で話をした

北川の母親が言ったことば「世間知らずの息子が、ご迷惑をおかけして、でも大事にいたらなくて、幸いでした」

廊下で待つ俺にも聞こえた
姉の職場にも、噂はひろがり…

姉は退職してる

あんたの言う、大事、ってなんだよ!

金積めば済むのか!

示談は前向きに進んだようだけど、 

俺は、聞こえたんだ

このビルの入り口で、北川の両親の会話を

北川母「大学が一緒だったんでしょ、あの女が誑かしたのよ、頭下げる事なんてないわ」

北川父「問題をややこしくするな、黙って頭さげとけ」

この親じゃ、北川が馬鹿に育つ訳だよ…

帰りぎわ

北川母「本当にお嬢さんが無事でよかったですわ」

俺の母に、笑顔で、言った言葉

俺はカチンときた

俺「無事ってなんだよ」
「黙って頭下げてろって、旦那に言われてたろ!」
「このビルの入り口で!」
北川の両親の顔色が変わる
俺「なに笑顔で言ってんの」
「詫び入れに来たのか!
喧嘩売りに来たのか!はっきりしろよ!」

怒鳴りつけた

不愉快そうな顔してた、北川の母だった

 
帰りの車の中で、俺の母が言った言葉

母「大翔が人を怒鳴るなんて…」

以前の俺なら、不愉快でも、態度や、言葉には、出さなかったかもしれない

父も怪訝そうな顔していた
この人(両親)達の前では、自分を出さない方がいい
そう思った

俺は優秀で良い子供を演じようと決めた

家で、独り待つ、姉が心配だった

早く帰らなきゃ

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