《MUMEI》 「ちょっと待ってくれ!家族にこの事伝えなきゃ!」 俺は机の上に置いてあった青い携帯を取ろうとした。 「…今はいい」 しかし、主に止められた。 「なんで?」 「騒がられると面倒だ」 俺は携帯を置き、主のほうをまっすぐ見つめる。 「…結局、なんだよ…あんた」 「私はあなたにすべてを託したのです」 託す…?なにをだ…? 腕を組み、考え込む。 「俺…仮にも病人なんだけど…一人にしてくんない?」 「試練を与えてからだ」 そして、主が腕を振り上げた後、翔が現れた。 今学校なんじゃないのか!? 「な!なんでこんな宙に浮いてんの!?ちょっと、紀和!なんとかしろ!」 翔は長い赤毛を振り乱し、パニック状態だ… (これが俺への試練だというのか…?) 「あんた、俺の兄貴にもおんなじ事やったのか!」 俺はキッと睨みつけた。 主は腕を降ろして見下したように話す。 「…私は兄貴にはしていない。むしろ、あの人には彼女がいないだろう?」 「…そうか」 翔はジタバタしたままだった。 「もー!紀和!早くこれをなんとかしてよ!!」 「…ごめん、お前も試練があるようだから」 翔の動きがピタッと止まった。 「試練…?なにそれ」 「そうだよ…君には試練がある」 そして、俺は主を見上げた。 「兄貴にもおんなじ事やったのか!」 「やってないさ…第一、あいつには彼女がいないだろう」 俺はハッとなって考えた。 「あぁ…そうか…」 「紀和クン…君は、翔ちゃんを愛しているかい?」 俺はハキハキと話す。 「あぁ!もちろんだ!」 「…翔ちゃんは」 「アタシも紀和が一番大事だ!」 そして、主は腕を降ろして翔をベッドへ降ろした。 「…本当に仲がいいんだな」 「あんたは、自分の力を利用して、恋人たちを別れさせようとしてたんじゃないのか?」 翔の言葉に、主は睨みつけた。 「そうさ…愛が憎かった…」 前へ |次へ |
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