《MUMEI》

「お〜っす。」


少し遅れて恭介が到着する。


体育館に揃う面々。


残るは、


猪狩だけだった。


「あれ?
あと1人足りなくないすか?」


「ん?うん。
もうすぐ来ると思うんだけどね。」


「つ〜か誰来んすか?
自分が言うのもなんですけど、このチームかなりレベル高いと思いますよ?」


「あ〜、
知ってるかな?


まぁ来てからのお楽しみってとこだね。」


アップを行う両チーム。


キャプテンの座をかけた試合だということは、


赤高の選手、クロ、翔太以外は知らない。


遊びの試合だろ?


千葉と阿久津はそう思っていた。


体育館2階。
ギャラリーには若干の観客がいる。


(土曜日なのにわざわざご苦労さんだね…)


少しだが生徒も混じっている。


(遊びじゃないんだけどね。)


そしてその若干の観客の中には、


藤田美紀の姿もあった。


(やば…
高校生ばっかりじゃん…)


ホームなのにアウェイ。
かなり居づらい状況ではあったが、


(一応私服の人もいるんだ…)


翔太の彼女、杉内理紗。


自分以外の私服の女の子を見て、少し安心していた。


(おせ〜な…)


クロがドアの方を見る。


「ガラッ…」


タイミング良く体育館のドアが開く…


動いていた全員の足が止まり、


話していた全員の口が閉じる。


一瞬で静まり返った体育館に、


その男は1歩ずつ足を踏み入れる…


(…来たか。)


「…よう。」

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