《MUMEI》

ハァ…ハァ…


どれぐらい走っただろうか。


ふと我に返ると見知らぬ光景が広がっていた。


見たこともない大きなビルが建ち並び、
綺麗に整備されたコンクリートの道路が果てしなく続いている。


ここは一体何処なんだ?


不安な思いとは逆に、
俺の足は何かを知ってるかのように動いている。

不思議な感覚に浸りながらも、
さっきの焦りの気持ちが自然に消えて、いつの間にか安心感を覚えていた。


俺の足は知っているんだ。


俺が向かうべき道を。


そう思うと、身体の奥底から熱いものが込み上げて来た。


俺は更にスピードを上げた。










しばらくすると、都会には不釣り合いな少し古びた野球ドームが見えてきた。


ドクン……


思わず胸が高鳴る。


これは恐怖からなのか、それとも歓喜からなのか分からなかった。



ビルとビルの間に窮屈に収まった野球ドームからは、
遠くからでも非常に盛り上がっていることが伺えた。


大歓声が聞こえてきたからだ。


蓮翔ちゃん上手くやってんだな。


俺は入口まで回り込むと、しばらく息を整えながらゆっくりと階段を登って行った。


もう試合決まっているかもな……


俺は軽くフッと微笑むと、余裕な表情を見せながら試合をしている友の姿を思い描いていた。

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