《MUMEI》
忍のお菓子教室
「サックリ混ぜろ」

「サックリ?」

「こうだ」

「ちょ、ベタベタすんな」

「俺が直接混ぜたらお返しにならないだろう?」

「う…わかった。もうわかったから、離れろ!」


(絶対嫌がらせだ)


俺は、後ろから抱きしめるような形で俺の手を握りしめてきた忍を睨みつけた。

今日は、三月十三日。


話は、数日前に遡る。


『やっぱり、手作りには、手作り…だよな?』

《お前の好きにしろ》


俺の質問に、忍は相変わらず冷たく答えた。


俺がこの一ヶ月ずっと悩んでいたのは、ホワイトデーの事だった。


ほとんどの女子には、志貴が言ったように、●ュッパチャップスを買おう…
としたら、志貴に『私が人数分買っておくからお金だけちょうだい』と言われた。


それでいいのかという気持ちがあったが、俺は正確な人数がわからないから、言われた通りにした。


その志貴と、果穂さん用には、洋菓子店のクッキーを購入した。


そして、俺は、今。


「ハート型は無いからな」

「するわけ無いだろ!」


忍に教わって、部屋で星型クッキーを作っていた。


忍は意外な事に、お菓子作りもラッピングも出来たのだ。

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