《MUMEI》
相変わらずなやりとり
「…普通だな」


忍は焼き上がったクッキーを食べて一言言った。


「お前が教えたんだろ」

「まぁ、お前の手作りなら、この程度でいいだろう」

更に一枚食べながら、笑われた。


俺は、無言で忍の持ってきた道具を洗った。


オーブンレンジは、忍が買って持ってきたから新品だったが、道具は使い込んだ感じがした。


「忍、もしかしてお菓子作り好きなのか?」

「旦那様が好きだったから、必要だっただけだ」

「…悪い」


忍は何も答えず、俺の隣に来て道具を拭いてしまった。


「あ、でも、俺、忍の作ったの食べた事…」


言いかけて、思った。


(嫌いな俺に作るわけないか)


忍は相変わらず何も言わなかった。


「一応、キスぐらいしとくか?」

「い、いい!」


(やっと喋ったと思ったら、それかよ)


玄関で靴を履く忍を思わず睨んだ。


「そういえば、最近チェックしてないが、体は相変わらずか?」

「あ? あぁ」


俺の体は相変わらずツルツルで


相変わらず性的な反応をすることは無かった。


忍は、『そうか』とだけ言って、帰っていった。

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