《MUMEI》

「蓮翔ちゃ……」


思わず息を呑んだ。


あまりの友の変わりように……


ホームランを打たれたショックからなのか、
投げた体勢のまま固まっている。


目は大きく見開かれ、
初夏の日差しからなのか、額には汗が滲み出ている。


これが……蓮翔ちゃん…??


以前見た友はあんなに大きく見えた。


けれど、今は……
あの面影すらない。


不安に駆られながら尚も蓮翔ちゃんに近付こうとすると階段を下りて行くと、
どこかで聞いたことのある声が俺の名を呼んだ。

「颯馬かっ!!?」


成瀬だった。


なんでここに……


「何しているんだ…?」


「いや、クラスに野球のダチがいてよ!!
応援しに来たってワケ!!」


そう言うと二カッと笑って、俺をまじまじと見る。


「なんだよ!?」


「ん、どうしてここに颯馬がいるのかなーって、おいっ!!」


俺は成瀬の言葉を無視して、再びマウンドに視線を落とした。


蓮翔はさっきとは違う動きをしていたが、
動揺を隠しきれない様子のようだった。


その時、俺は咄嗟にあることを思い出した。


そうだ…

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