《MUMEI》 「岸君、違うなあー。私は雁首揃えて待ってろと伝えたのだけれど?」 すらりとした長身の女性だ。多分、俺よりは小さいと思うんだ…… 「ままあ、あのねーべっこうあめ食べたい。」 るりちゃんのお母さんだったのか。確かにあの美人度なら宗方さんと並んでいても違和感無い。 「じろー、俺もべっこうあめ食べたい。」 こっちのお子様も主張し始めた。 年始に祭屋台が並ぶのは何故なんだろうか。 「岸君に買ってもらいなさい。そっちのキレーなお兄ちゃん達も岸君が奢ってくれるって。」 目が合っていたから多分俺に言ってくれた。 「利恵さん……?」 奢ってくれる人は不本意らしい。 「やったあ岸君の奢りー」 「りー。」 宗方さんとるりちゃんは仲よさ気に手を繋いでいる。 「いや、そんな自分で出しますから……」 会ってすぐの人からお金を巻き上げるなんて犯罪だ。 「俺、青色がいいっす」 コラーーーーーーーー七生くーーーーん! 「るりあか〜」 るりちゃんと素早く屋台に向かっていく。 すぐ仲良しになっちゃう適応能力おそるべし……! 「じろーは何がいい?」 不意に見せる七生の笑顔に今もときめく俺って…… 「子供っていいねぇ」 しみじみと宗方さんが呟いた。 「俺は二郎みたいなおしとやかな子が欲しい……。」 乙矢は屋台を見ながら遠い目をした。 「なんで俺なの……」 例えおかしくない? 「だって俺が育て上げたようなものだし。」 否定はあまり出来ない…… 「どんなにやんちゃな子でも乙矢は面倒見いいから結局、可愛がるんだ。父親になったら分かるよ。」 七生の世話も同時にしちゃうような凄腕家政夫乙矢。 「が、がんばります……」 何故そこで宗方さんが頑張るのだろうか。 前へ |次へ |
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