《MUMEI》

「 んむ……、 んっ」

背中にめり込む手が痺れ、塞がれた唇から鉄の風味の唾液が溢れ出す。

繩で身動き取れない姿にされ、千石様は私の足に片腕を掛けながらもう一方で臀を掴まえる。

開ききっても尚、ちぎれる痛みは治まらない。




私はおそらく、今日初めて、彼に抱かれる。

躱を縛られ、乱暴に躱を扱われても私には分かる。


彼の躱は熱を帯びて、私への接吻は淫猥に何度も繰り返し求めてくる。




「千石様あっ…… あっ、
 あんっ 」

神経が一点に集まる。
全身の痛みよりも、中から浴びる情欲が先攻した。


「もっと、 聞かせろ、 深く支配させろ……」


「あ、 ひ……ぃ  」

血が通わないような麻痺した腕を、使えたら。
繩を解けてしまえたら。

抱きしめてさしあげるのに…………


「 モモ…… 私を忘れさせろ」

そうか。
彼は、今までこんな表情で私を抱いていたのか……
彼が黒い着物を着るのは贖罪の為、千石様であるのも……
私を抱くのはその罪の意識に苛まれた自分に潰れない為……





「……もっと…………すごくして……ください……」

それなら、いくらでも貴方が生きていられるように痛みを与えて貰いたい。


「良い傾向だ……!」

千石様の瞳の奥が輝く。
乳首に爪を立たれる。


「 ア゛……ッ」

振動で繩が軋む。


「新しくまたピアスでも誂えようか?
臍に一つ有るから乳首に一つずつ……亀頭に一つ……きっとよく似合う。」

乳首と亀頭に爪を入れられる。
芯まで躱が絡むので千石様の形を一層克明に知らされた。


「  ……んあふっ 」

沈み込む熱に翻弄される。


「はは、よく締め付ける」

千石様が愉しそうに笑っていらっしゃった。私には無性にそれが嬉しい。



「アゥ……もっと……」

笑って下さい……!

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