《MUMEI》
警告
「おはよー祐也」

「おはよう。ちょっと待ってろ」


柊は呼び出したが、俺は祐は呼び出してはいなかった。


しかし、何となく来そうな予感はしていたから、俺は慌てなかった。


(そうだ)


ついでに、志穂さんと希先輩と安藤先輩の分も祐に渡してしまおうと思った。


「これは、駄目だ」


祐は、安藤先輩の分だけを突き返してきた。


「何で?」

「俺からだと誤解されたら困る」

「あ…」


祐は今年は安藤先輩からチョコをもらわなかった。


屋上の扉の前で、さりげなく安藤先輩に、祐にチョコをやるのか質問したら、祐が、安藤先輩の為に今年は自分の分は作らないでくれと、葛西先輩を通じて安藤先輩に伝えたらしい。


「悪かった」


それだけ、安藤先輩を気遣って、意図的に避けているのに、俺からのクッキーを渡すのは不可能だった。


「いや。ところで、これ。
お祖母ちゃんと志貴の分もあるんだろう?」

「? いや? 二人は市販のクッキーだけど?」


俺の言葉に祐が顔色を変えた。


「祐也。これの材料、まだあるか?」

「もうない」

「ヤバいぞそれは!」

「何が? ちゃんと同じ位の金額のを買ったぞ?」

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