《MUMEI》
行列再び
放課後。


(…またかよ)


一ヶ月前と同じ状況に俺はうんざりした。


「仕方ないわよ」


蒸しパンを手にした志貴は上機嫌だった。


(まぁ、…いいか)


志貴は喜んでいるし。


一応、お返しはしないといけないと思っていた。


俺は、最初の一人に志貴が用意してくれた●ュッパチャップスを渡した。


「あの、写真は…」

「あ、」

「あるわよ」


(え?)


無いと答えようとした俺の隣で、志貴が笑顔で答えた。


「超特急で仕上げたから」
「げ…」


そこには


エプロン姿で笑顔の俺がうつっていた。


(あの時か〜)


思わず頭を抱えた。


それは、昼休みに安藤先輩が一枚だけ撮った写真だった。


(俺、こんなの着てたんだ)


バタバタしていて気にしていなかったが、俺の着けていたエプロンはピンクで花柄だった。


「いい仕事してくれたわ」

志貴はものすごく満足そうだった。


そして、そんなエプロンを用意したのは、安藤先輩だった。


(あぁ、もう…)


何がそんなに嬉しいのか、写真を受け取っていく女子達も上機嫌だった。

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