《MUMEI》 私の躱に巻き付いていた繩は刃物で切られ、赤みを帯びた麻縄の紋が刻まれていた。 「従順な躱だ……。」 指先から首へと噛まれてゆく。 「……っふ 」 言葉も出ない。 「初めて見たモモを別の生き物のようだと思った。 八十がうっとり眺めるお前の笑顔意外の表情を知りたかった。 億永がモモに刺客を送り蹂躙させたと解り、怒りを覚えた……そうだろう? モモの肉体を自由にしてやれるのは私だけだ。」 洗礼のような靜かな接吻の後に、舌を噛まれる。 彼の首を圧迫する指が優しく喉を撫でた。 欲して、熱くなる。 涙が出る。 深く、扇動されて繩で歪んだ下肢が異常に震え出す。 吐露された液状の微熱に酔わされ、頭が揺れた。 「 あ゛はあッ くっ……」 渦を巻きながら視界は火花を散らして暴れる。 腹の底から満ち溢れる。 私が気が付いたときには千石様は着物をお召しになっていた。 ずっと、私が眠っているところを見ていて下さったのだろうか…… 「……私、千秋さんの名前について考えてたのです。 “千秋”は“センシュウ”という意味では長い年月や長寿、そして天子の誕生日を示す千秋節でもあり、人の死を婉曲した言葉でもありますね…… 貴方に逢う為に私は生まれてきました。 死にたくなったら私を痛め付けて気を晴らして下さい。それが、私の分まで此処に居てくれた八十への償いなのです……」 千石様の足先に接吻した。私の口に千石様は足の指を詰めてきた。 「……解れば宜しい」 千石様が指を入れやすいように私の髪を掴んで顎を下げさせる。 必死に口内を支配する指を嘗めた。 犬や動物の親愛のそれのように。 内股から滴り落ちる雄汁に辱められても彼に縋り付く自分を知った。 前へ |次へ |
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