《MUMEI》
合図
ガンッ!!!!!!!!!!!!


静まり返った観客席に物凄い大きな音が鳴り響いた。


皆は、驚いて音のした方を見た。


蓮翔ちゃんもワンテンポ遅れてグランドからこちらへ顔を向ける。


音源の主は俺。


目の前にあるフェンスを思い切り蹴ったのだ。


……力入れすぎたかな。

少々ヘコんでいる。


蓮翔ちゃんの目を覚まさせることが出来るだろうか。


…いや、逆に驚かせてしまったか…?


俺の姿を見つけた途端に、蓮翔ちゃんの目が一層見開く。


俺は軽くフッと微笑むと、立ち上がってフェンス越しに蓮翔ちゃんを見下ろした。


「おい、桐海蓮翔。
この俺が忙しいなか観に来てやってんだ。

まさか負けるんじゃねぇだろうな。


…それとも、お前の実力はその程度か?!!」


俺はわざと挑発的な言葉を蓮翔ちゃんに投げ掛けた。


当の本人は、未だ信じられないといった表情でこちらを見上げているだけだ。


やがて、消え入る様な声で何かを呟いたと思うと、いきなりフッと笑顔になった。


そしてー……

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