《MUMEI》
秀さんの言動
「大変だね、田中君も」

「秀さんは違うんですか?」


秀さんは、高山家の中ではどちらかと言えば目立たない存在だが、それはあくまでも高山家の中での話だ。

客観的に見れば、長身で、優しい顔付きで、しかも社長という肩書きがあるのだから、バレンタインもホワイトデーも大変そうな気がした。


「俺はそうでもないよ。もらうのは、志穂からだけだから」

「そうなんですか?」

「そう。俺、甘いの苦手だから。
志穂のだけで十分」


(あれ? でも…)


クリスマスイブには普通にケーキを食べていたような気がした。


「あれも、志穂が作ったのだから」


秀さんが言う通り、ケーキは志穂さんの手作りで、かなり美味しかった。


「じゃあ、今日も志穂さんにお返しを?」

「うん。君を送った後でね」

「すみません」

「いいよ。母さんはいつも強引だから」


そして、車は高山家の駐車場に到着した。


秀さんは、降りる俺に祐が撮った写真を手渡した。


(気のせい…だよな?)


車中で秀さんが志穂さんの事を話す時の甘い響きも、これから志穂さんに会う秀さんの顔が普通に兄としての喜びにしては緩みすぎていたのも、深く考えない事にした

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