《MUMEI》
帰りの車中
「母さんも懲りないなあ」

「前もあったんですか!?」


俺は、行きと同様に帰りも秀さんの車の中にいた。


「そう。俺と、志穂にね。
結局俺は独身だし、志穂は自分で仲村君を選んだけどね。

まぁ、悪い子はいなかったけど」

「そうなんですか…」


(だったらもうやめればいいのに)


それか、本人の意志だけに任せればいいと思った。


「でも、あいつは俺達とは違うからさ」


俺の心を読んだように、秀さんは苦笑した。


「結構手が早いみたいだし。それに、あの見た目だから、候補の子達も必死になりそうだし?」

「だから、…俺ですか?」

迷惑な話だと思う。


(大体俺、まだ就職するって言ってないのにな〜)


「母さんの中では、君はもう高山家の一員みたいなもんだね。

こんなに短期間で母さんに気に入られるなんて、すごいよ」


(嬉しく無いです)


心からそう思ったが、口には出さなかった。


「俺としても、君みたいにしっかりした子が祐の側にいてくれたらと思うよ。
他の皆とも仲良くやって…」

?


秀さんの目が急に鋭くなった。


その視線の先には屋代さんの車が見えた。

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