《MUMEI》 険悪な空気俺を乗せた秀さんの車は、屋代さんのすぐ後に駐車場に入った。 「自転車は、志穂の所に行った後に駐輪場に止めたから」 「ありがとうございました」 俺が車から降りるのと、屋代さんが車から離れるのはほぼ同時だった。 「こんばんは」 「こんばんは」 俺と屋代さんは、普通に挨拶をした。 それから、屋代さんは車の中にいる秀さんに軽く会釈をした。 秀さんは… 勢いよくバックをして、駐車場から出ていった。 「あれが、普通の反応だよなあ…」 屋代さんは、俺に向かって軽く笑った。 屋代さんが仲村さんと 秀さんの妹の志穂さんの夫と、恋人同士である事は、高山家の皆が知っていた。 しかし、高山家の皆は志穂さんが屋代さんを認めているからと、屋代さんを責めなかった。 「初めて会った時も殴られたし」 「そうなんですか!?」 「うん。二発目は、志穂が止めてくれたから大丈夫だったけどね。 よっぽど、大切で… 好きなんだよなあ」 「そうですね」 それは、俺も何となく感じていた。 しかし、俺も屋代さんも、その好きの種類をあえて確認せずに、それぞれの部屋に帰った。 前へ |次へ |
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