《MUMEI》
希先輩の進路
未遂だったし、セクハラといっても、大した事ではない。


しかし、希先輩は普通より純情な所がある。


介護の現場を実際に見て、『無理かも』とひそかに呟いていたのを聞いた。


入居者には男性もいて


当然、彼等の入浴介助も排泄介助もある。


実際にしている場面は見なかったが、風呂上がりの会話から、普通に女性職員が男性入居者の介助をしているのがわかった。


女性入居者の中には、男性職員を拒否する人もいるようだが、その逆は全く無いようだ。


だから、先日希先輩は図書室で会った時、図書当番の仕事の合間に、たくさんの進路に関する資料を読んでいた。


『本当はね。母さんには難しいんじゃないかって言われてたの。
他にも人の力になれる仕事はあるはずだって。

…祐希と同じ仕事にこだわり過ぎてたの』




「? どうしたの?」

「あ、いえ… その…」

「…いくら祐也でも、ダメだぞ」


希先輩を何気なく見つめていたら、柊に睨まれた。


「そんなわけないだろ。ただ、進路、どうしたのかちょっと気になっただけだ」

言いながら、俺はふと思った。


(葛西先輩ってどうするんだろう)

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