《MUMEI》
葛西先輩の進路
乗り換えの為に俺達六人は、一旦電車を降りた。


待ち時間が中途半端だったから、とりあえずホームで時間を潰す事にした。


「雅樹はカメラマンになりたいんだよな」

「そうなんですか?」

「まぁ、夢だけどね」


葛西先輩は、少し照れていた。


「遠藤美緒って知ってる?」

「え!? あ、は、はい!」

(び、びっくりした)


俺は思わず手に持っていた缶コーヒーを落としそうになった。


「俺、あの人が目標なんだよね」

「そ、そうなんですか…」

「あれ〜? 俺、その名前何か最近聞いたような…」

「俺が最近出た写真集の話したからじゃないか?」

「…そうだっけ?」


(いや、違うから!)


「何言ってんだ! お前俺といる時美緒さんに会っただろうが!」

「田中君、…今、何て?」


(しまった)


思わず祐にツッコミを入れた俺を、葛西先輩が凝視していた。


次の瞬間


ガシッ!


(い、痛い)


すごい勢いで両肩を掴まれた。


「ちょっと祐也に乱暴しないでよ」


そんな志貴の言葉を、葛西先輩は全く聞いていなかった。


それから俺は電車が来るまで、葛西先輩の質問責めにあった。

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