《MUMEI》
痛い視線
電車が来る数分前から、何となく感じていた。


しかし、その時俺は葛西先輩の質問責めにあっていて、周りの視線は気にならなかった。


乗り換え前と乗り換え後の沿線は違う。


それまでは、柊や志貴をキングやクイーンだと認識していて、『騒いだりしたら嫌われる』という空気が漂っていた。


しかし、今は違う。


俺達に注がれる視線は痛い位露骨だし、話しかけてくる連中も後を絶たなかった。


「なぁ、バラバラにならないか?」


俺は、小声で提案した。


「祐也、一人になったら襲われるわよ」

「そんなのっ…」

「あるある」

「祐也はある意味一番危険だよ」

「何だよ、それ…」


俺は、ため息をついてうつ向いた。


「あのね、私達はこういう状況に慣れてるし、葛西君はほら、見た目も強そうでしょう?

でも、田中君は、その…

可愛いし。

何となく…一番隙があるから、…危ないわよ」

「何ですか、それ…」


一番可愛くて隙がありそうな希先輩に言われて、俺は正直


普通に凹んだ。


そんな俺を皆がなだめるので、俺は更に注目を浴びてしまった。


長い長い三十分だった。

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