《MUMEI》
俊彦さんと柊
「それ、本命用?」


最後に春日さん用のブレスレットを作っている時、有理さんが話しかけてきた。

細いゴム紐に通すから、これなら春日さんが痩せても身につける事ができる。


「まぁ、恋人じゃないけど、大事な人用ですね」

「そうなんだ。…それにしても」


有理さんはチラッと柊を見た。


柊は一つ一つのビーズの色合いのバランスを、かなり念入りに確認しながら携帯ストラップを作っていた。

「俊彦さん並に熱意込めてるけど、それにしては携帯ストラップって、控え目だよね」

「俊彦さんも蝶子さんに作ったんですか?」

「それがね〜」


有理さんは、楽しそうにその時の様子を語ってくれた。


蝶子さんは俊彦さん以外からアクセサリーをもらった事があり、それがブレスレットで


俊彦さんは悔しいから、自分は手作りを贈ると、贈るからには本格的な物をと、有理さんの所に押し掛けてきたらしい。


「ビーズ職人になれる域まで極めちゃって、焦ったよ」

「俊彦さんて、何でもできるんですね」


(柊と違って)


「それが、そうでも無いらしいよ」

「え?」


そして、俺は俊彦さんの弱点を聞きながら、ブレスレットを完成させた。

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