《MUMEI》
告白の練習
「ところで、お前いつになったら希先輩に告白するんだ?」

「そ、それは…。希さんが失恋のショックから立ち直ったらと」

「もう立ち直ってるように見えるけど?」


少なくとも、俺にはそう見えた。


「う、あ…でも…」

「せっかくだから、それ渡して告白すれば?」


俺は、柊がようやく完成させた希先輩用の携帯ストラップを指差した。


「う、でも…」

「もう着くぞ」


待ち合わせ場所の『クローバー』が見えてきた。


「れ、練習してもいいかな?」


柊が俺の腕を引っ張った。

「…何の?」


向かい合い、真っ赤になった柊の顔を覗き込む。


「ここここ…」

「告白?」


柊は深く頷いた。





「て、ちょっと待て! ここ道端で、俺は男だ!」

「関係無いよ! 一回だけでいいからちゃんと聞いて! 俺…」

「待て! 柊! いくら何でもこれはおかしいぞ」


(どう考えてもおかしい!)

しかし、柊の暴走は止まらず、何と…


「好きだ…っ!」


俺を抱き寄せて、耳元で甘く囁いた。


「お前、こういう度胸があるならなあ…」


俺は呆れてそのまま大人しくしていた。

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