《MUMEI》

「君、もしかして、あの滝澤颯馬君かい?」


振り返ると、二人組のおじさんが愛想笑いを浮かべていた。


「だったらなんだ…?」

思わず身構える。


しかし、怯むことなく、メモ帳を片手に持っている一人が話しを続ける。

「滝澤君さ、いまさっき桐海蓮翔君と話してたけど、親しい仲なの?」


なんだコイツ等…。


もう一人がすかさず大きなカメラを構える。


「お前等、人のプライベートまで調べ上げる気か?!!」


「いや、そう言う訳では…」


そうしてまた愛想笑いを向ける。


「だったらさっさと何処か行ってくんねぇ?

マジ目障りなんだけど!!」


俺が怒鳴り付けると、二人はすごすごと引き下がって行った。


珍しいな。


いつもなら犬みてぇにしつこく嗅ぎ回って来るのに。


俺は不思議に思いながらも、再びマウンドへ視線を戻した。

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