《MUMEI》

僕は白昼夢を振り払うように前を見据えた…。



――…夢でも現実でも……どちらでもいい…。



…昨日の奇妙な出来事は忘れよう…。



…あんな物を使わなくても、しずか君は僕に振り向いてくれる…。


…いや……きっと僕が振り向かせてみせる…!



僕はそんな決心を胸に秘めて、彼女の帰りを待ち続けたんだ――…。




――…すると…


「あら、出来杉さん。いま帰り?」


待ちわびた愛しい声が、僕を振り向かせたんだ!



「しずか君…!」


思わず僕の声のトーンが高くなる――…。

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