《MUMEI》
…サル?
屋敷でパーティーがある時は、皆かなり忙しい。


(じゃま、だよな)


俺は、父や皆の邪魔にならないように、パーティーが始まるまで、本邸の周りをウロウロしていた。


「あれ? 珍しい。
小さい子がいる」

「?」


忙しい空気とは無縁な、呑気な、少し高めの男性の声がした。


「…だれ?」


見回しても、辺りには人影すら無かった。


「上だよ」


クスクスと、笑い声が聞こえた。


見上げると、確かに三階の窓から上半身が見えた。


(まぶしい)


逆行で、顔が見えなかった。


「ちょっと待ってて」

「あ! あぶな…」


窓枠に、その男性が両足を乗せた。


そのまま、近くの木の枝に飛び移ると、スルスルと降りてきて


「よっと」


まだ、かなり高さがある位置から、俺の目の前に飛び降りてきた。


(サルみたい…)


俺は目を丸くして、呆然としていた。


「可愛いなぁ、…迷子?」

頭に着いた葉っぱを落とすと、男性は優しく微笑んで、俺の頭を撫でてきた。


実際近くで見ると、男性、というより、男の子と表現した方がいい、あどけなさを残した少年だったが、三歳の俺にとっては、十分大人だった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫