《MUMEI》

ス…


俺は静かに腕を振りかざした。


そうして左足を力強く踏み出して、思いっきり右腕を振る。


俺の手から離れたボールはミットへと真っ直ぐな軌道に乗る。


しかし、打者の手前でフッと横にズレたかと思うと、いきなりガクンと下降した。


ズドンとミットに収まる音を交えて。


打者は驚いてその場に硬直している。


やった…


……成功だ!!!


「うっしゃあ!!!」


俺はガッツポーズをせずには居られなかった。


フェンス越しに颯ちゃんを見ると、椅子から乗り出す様な体勢で俺を見下ろしている。


見たかっ俺の実力!!!

俺は颯ちゃんにVサインを送った。

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