貴方の中の小悪魔
を知る神秘の占い

《MUMEI》
プロジェクト「VAL」
自転車で研究所に向かう途中、いつも通る河原の道で馴染みのある顔に出会った。
高校で同じクラスだった幼なじみの天乃 比奈だ。
今は看護婦を目指して、医学系の大学に進んでいる。
「おはよう芥くん、いつもより早いね」
彼女は早朝のランニングが日課となっている。
…ご苦労なことだ。
「親父から電話があってさ、訳分かんないから今から行って確かめにいく」
「ふーん、大変だね…あっ、それじゃあ今日はお弁当作ってあげられないね…」
彼女は昔っから世話好きで、俺が研究所に勤めるようになってからは毎日のように弁当を持ってきてくれた。
「いいよ、いつも作ってもらってばかりで悪い気がするしな」
「私がしてあげたいから作ってるの!」
彼女はぷーっと頬を膨らませる。
相変わらずの世話好きというか…

けど、ずば抜けた知識と学力、そして親父の性格上世間からは変人扱いされていた俺にただ普通に接してくれたのは、彼女だけだった。
「今日は久しぶりに大学があるんだろ?俺の弁当はいいから、お前も遅れないようにしろよ」
ガル・ズィーのテロによって、最近は臨時休校をする学校が増えた。
比奈の大学もここ一週間程、休校になっていた。
こういう時代になるのなら、どっちみちキャンパスライフは楽しめそうには無かったわけだ。
「うん、それじゃ明日は作ってくるからね、あと今日の夕飯食べに来てよ!新しい料理覚えたんだからね!絶対だよ」
そう言うと彼女は笑顔で走り去って行った。
朝彼女に出会えただけで、少し気分はよくなった。




研究所は妙に静まり返っていた。
まぁ…いつも静かなのは変わりないが、人の気配というものが無かった。
「おかしいな…所員が1人もいないなんて」
徹夜組の姿もない、全ての部屋を見て回ったが誰一人確認できなかった。
親父の携帯に反応はない。
俺は仕方無しに自分の研究室に戻った。
「ったく、みんな一体どこに…」
その時、自分のデスクに見慣れない書類が増えていることに気付いた。
「なんだこれ?新作のロボットか?」
綿密に描かれた設計図、機体についてのコンセプトなど細かく記載されていた。
俺は一通り目を通す。
「なんなんだよ…これ」
書類の隙間から一枚のメモを見つけた。
親父の字だ。
「……何?」
俺はメモの内容を確認すると、急いで研究所外の貯水池に向かった。

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